FIFAが進める「ワールドカップ売却計画」が大きな波紋を広げています。
ニュースだけを見ると、FIFAがワールドカップそのものを民間企業へ売却するようにも受け取れますが、実際に計画されているのは大会の所有権を丸ごと手放すことではありません。
FIFAは、ワールドカップをはじめとする大会の商業事業や運営業務を新子会社「FIFA Forward Enterprise」に集約し、その株式を最大20%まで外部投資家へ売却する構想を発表しています。
約200億ドルという金額も、FIFAやワールドカップの売却価格ではなく、新会社の企業価値として示されているものです。
2026年8月1日時点では計画段階にあり、FIFA加盟協会の過半数とFIFA理事会の承認が得られなければ、新会社は設立されません。ップ売却とは何?FIFAが発表した計画の内容
ワールドカップ売却と呼ばれている今回の計画は、FIFAが男子ワールドカップや女子ワールドカップなどの大会そのものを売る話ではありません。
FIFAの収益を生み出している商業活動と大会運営業務を新会社へ移し、その会社の少数株式を民間投資家に保有してもらう構想です。
FIFAは2026年7月28日、新会社「FIFA Forward Enterprise」の設立を検討していると発表しました。
売却されるのはワールドカップではなく新会社の株式
FIFAが外部投資家へ売却する計画なのは、FIFA Forward Enterpriseの株式です。
新会社には、主に次の事業が集約される予定です。
- ワールドカップなどの大会運営
- テレビや配信サービスの放映権
- スポンサー契約
- チケット販売
- ライセンス事業
- 大会関連の商業活動
ワールドカップを含むFIFA大会から生まれる収益事業を、独立した商業会社として運営する形になります。
そのため「W杯売却」「FIFA売却」という表現が広がっていますが、より正確には「ワールドカップ事業を扱う新会社の少数株式売却計画」です。は大会運営や競技面の決定権を維持する方針
FIFAは、新会社が設立された場合でも、FIFA Forward Enterpriseを恒久的に所有し、支配権を維持すると説明しています。
ワールドカップの開催方式や競技規則、国際試合の日程、開催地などについて、外部投資家が決定する仕組みではないとしています。
インファンティノ会長も、FIFAは外部からの干渉を受けずにサッカー界を統括し続け、ワールドカップや女子ワールドカップもFIFAの大会として残ると説明しました。
ただし、投資家は新会社の利益に関係する株主となるため、将来的に大会の収益性を高めようとする圧力が強くなるのではないかという懸念も出ています。ォワード・エンタープライズとはどんな新会社?
FIFA Forward Enterpriseは、FIFAが新たに設立を計画している商業子会社です。
略称は「FFE」で、FIFAが現在直接行っている商業活動と大会運営業務を一つの会社に集める構想となっています。
FIFAは新会社を自ら所有し、経営の主導権を維持したまま、民間資本を呼び込もうとしています。
約200億ドルは売却額ではなく新会社の評価額
報道で大きく取り上げられている約200億ドルは、FIFAやワールドカップの売却価格ではありません。
金融大手JPモルガンの試算をもとにした、FIFA Forward Enterpriseの企業評価額です。
FIFAは、この約200億ドルの企業価値を前提として、新会社の最大20%に当たる株式を外部投資家へ売却し、最大42億ドルを調達する計画を示しています。
つまり、約200億ドルでワールドカップを売るのではなく、約200億ドルの価値があると見積もった新会社の一部を売却する構造です。家に認めるのは最大20%の少数出資
FIFAが外部投資家へ売却する予定の株式は、最大20%とされています。
FIFAは少なくとも80%を保有し、過半数を大きく上回る株式を維持する方針です。
外部投資家が取得するのは、会社を単独で支配できない少数・非支配持ち分になります。
FIFAは、長期的な投資を行う投資家を選び、調達した資金や新会社から得られる利益を世界のサッカー振興へ再投資すると説明しています。
ただ、具体的な株主の権利や配当条件、新会社の取締役構成などは、2026年8月1日時点ではすべて公表されているわけではありません。
外部投資家には投資会社の名前も報じられている
主要報道では、米国の投資会社Thrive Capitalを創業したジョシュア・クシュナー氏が関係する投資ファンドが、中心的な投資家候補として挙げられています。
FIFAも、Thrive Eternalが投資家グループを主導する見通しだと説明したと報じられています。
ただし、株式売却はまだ完了しておらず、最終的な投資家の顔ぶれや出資比率が正式決定した段階ではありません。
JPモルガンが投資家募集を支援し、複数の長期投資家から資金を集める計画とされています。ワールドカップ事業の株式を売却する理由
FIFAが新会社を設立して民間投資家を受け入れる理由として掲げているのが、加盟協会への資金援助の拡大です。
FIFAには日本サッカー協会を含む211の加盟協会があり、各国の競技施設、代表チーム、育成年代、女子サッカー、指導者育成などに資金を配分しています。
インファンティノ会長は、ワールドカップなどが持つ商業的な価値をさらに引き出し、その利益を世界各地のサッカー発展に回す方針を示しています。
最大42億ドルを調達して加盟協会へ配分
FIFAは、新会社の株式売却によって最大42億ドルを調達する計画です。
計画が承認された場合、各加盟協会には2027年から2030年までの期間に、通常のFIFA Forward資金として2000万ドルが提供される予定です。
さらに、任意参加の「FIFA Fast Forward Programme」を通じて、一時金として最大2000万ドルを受け取れる案も示されています。
両方を合わせると、各加盟協会が2027年から2030年の期間に受け取れる資金は最大4000万ドルになります。
その後も、通常のFIFA Forward資金は2031年から2034年に2200万ドル、2035年から2038年には2400万ドルへ増額する構想です。ンティノ会長は商業価値を世界へ還元すると説明
インファンティノ会長は、サッカーの商業部門を専門的な事業として運営し、そこで生まれる価値を世界中へ広く配分したいと説明しています。
大規模な大会や代表チームを持つ国と、十分な収入源を持たない国では、サッカー協会の財政状況に大きな差があります。
FIFAは民間資本を受け入れることで、施設整備、指導者育成、国内大会、代表チーム、女子サッカー、育成年代などへの支援を増やせるとしています。
一方で、FIFAはすでにワールドカップの放映権やスポンサー契約から多額の収入を得ており、外部投資家へ将来の収益を渡してまで資金調達する理由があるのかという反論も出ています。画はすでに決定した?
FIFA Forward Enterpriseの設立と株式売却は、2026年8月1日時点では決定事項ではありません。
FIFAは一連の構想を「提案」と位置付け、211の加盟協会による協議と投票を行う方針です。
インファンティノ会長も、加盟協会に参加を強制するものではなく、機会を提示する計画だと説明しています。
加盟協会の過半数とFIFA理事会の承認が必要
FIFAの発表によると、新会社の設立には211加盟協会の過半数の支持と、FIFA理事会による承認が求められます。
加盟協会の支持が得られなければ、FIFA Forward Enterpriseは設立されず、FIFAの商業活動も現在の形から変更されません。
FIFAは2026年7月31日に追加声明を発表し、各加盟協会が内容を確認したうえで投票できるよう、協議を続けると表明しました。
「サッカーを売ることはない」とも述べ、FIFAが新会社を恒久的に所有・支配する方針を改めて示しています。日は一時金への参加を判断する期限
インファンティノ会長が加盟協会へ送った書簡では、一時金として最大2000万ドルを受け取れる制度への参加期限が、2026年9月19日に設定されています。
この期限設定については、十分な議論を行う時間がないとの批判も出ています。
FIFA側は参加が任意であると説明していますが、反対する団体からは、高額な資金提供と短い期限を同時に提示する進め方への疑問が示されています。株式売却計画に反対が広がる理由
ワールドカップ事業への民間投資家の参加を巡り、欧州だけでなく北中米カリブ海地域やアジアでも反対が広がっています。
反対している団体は、サッカーの商業化そのものだけでなく、計画が発表されるまでの手続きや情報公開にも問題があると主張しています。
UEFAはFIFA大会のボイコット方針を表明
欧州サッカー連盟のUEFAと加盟55協会は、FIFAが計画を進めた場合、ワールドカップを含むFIFA主催大会へ参加しない方針を示しました。
北中米カリブ海サッカー連盟のCONCACAFも計画への反対を表明し、アジアサッカー連盟のAFCもUEFAとCONCACAFへの連帯を示しています。
UEFA、CONCACAF、AFCを合わせると、FIFA加盟211協会の過半数を上回ります。
ただし、各国の協会が最終投票で地域連盟と同じ判断をするとは限らず、計画の採決結果はまだ決まっていません。透明性や投資家の影響を問題視
反対する団体からは、主に次のような声が出ています。
- 加盟協会や地域連盟への事前説明が不足していた
- 投資家や契約条件の詳細が十分に公表されていない
- 加盟協会へ判断を求める期限が短い
- 民間投資家の利益が大会運営へ影響するおそれがある
- FIFAがすでに十分な収益を得ているのに外部資金を入れる理由が不明確
特にUEFAは、サッカーやワールドカップはFIFA幹部が自由に売却できる資産ではないと強く反発しています。
FIFAは、報道の一部に誤りがあったため協議の予定が崩れたと主張し、各加盟協会による民主的な判断を求める姿勢を示しています。ンティノ会長の側近も辞任
2026年7月31日には、インファンティノ会長の上級顧問を務めていたカルロス・コルデイロ氏が辞任しました。
コルデイロ氏は計画に関与していなかったと明かしたうえで、サッカーの長期的な将来にとって望ましい取引ではないと批判しています。
FIFAの最高執行責任者を務めるケビン・ラムール氏からも、計画の進め方や情報共有を批判する発言が出ました。
これにより、地域連盟だけでなくFIFA内部にも反対意見があることが表面化しています。ップやファンへの影響はある?
FIFAの説明どおりであれば、新会社が設立されても、すぐにワールドカップの大会方式や競技規則が変更されるわけではありません。
FIFAは競技面の決定権を維持し、外部投資家にはサッカー統治や大会日程を決める権限を与えないとしています。
一方で、新会社が放映権、スポンサー、チケット販売、大会運営を担当するため、将来的な商業方針には変化が出る可能性があります。
チケット価格や開催方式の変更は発表されていない
現時点では、FIFA Forward Enterpriseの設立によって、ワールドカップのチケット価格が上がる、開催回数が増える、特定の国だけで開催されるといった発表はありません。
外部投資家が大会方式や開催地を直接決める制度も示されていません。
反対側が懸念しているのは、利益を求める株主が加わることで、より収益性の高い大会数、開催地、スポンサー契約、放映方法を求める圧力が生まれるのではないかという点です。
実際にどの程度の影響が出るかは、株主契約や新会社の権限、取締役構成などが明らかにならなければ分かりません。
FIFAが売却後も支配権を保てるかが焦点
FIFAは80%以上の株式を保有し、外部投資家には非支配持ち分のみを売却するとしています。
株式比率だけを見れば、FIFAが新会社の経営権を維持する仕組みです。
ただ、最大42億ドルを出資する投資家が、収益事業にまったく意見を持たないとは考えにくいとの指摘もあります。
契約上どこまで投資家の発言権が認められるのか、利益の配分方法はどうなるのか、FIFAが長期的に過半数を持ち続ける条件は何かなどが、今後の焦点になります。
まとめ
ワールドカップ売却と呼ばれているニュースは、FIFAがワールドカップそのものを民間投資家へ売り渡す計画ではありません。
FIFAは「FIFA Forward Enterprise」という新子会社を設立し、放映権、スポンサー、チケット販売、ライセンス、大会運営などの商業事業を移す構想を示しています。
約200億ドルは新会社の企業評価額で、FIFAは最大20%の少数株式を外部投資家へ売却し、最大42億ドルを調達する計画です。
FIFAは経営権と競技面の決定権を維持すると説明していますが、UEFAやCONCACAF、AFCなどからは、手続きの透明性や民間投資家の影響を懸念する声が出ています。
2026年8月1日時点では提案段階であり、加盟協会の過半数とFIFA理事会の承認が得られなければ、FIFA Forward Enterpriseは設立されません。
「W杯が売却される」というより、「W杯を含むFIFAの商業事業に、民間投資家が少数株主として参加する計画」と捉えると、今回のニュースの内容が分かりやすくなります。